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トロッコ列車 ~和気藹々~

嵯峨野観光鉄道。 「嵯峨野 トロッコ列車 」より嵐山トロッコ列車のほうがピンとくるかもしれない。嵐山には保津川沿いにトロッコ列車が走っている。渡月橋や世界遺産の天龍寺以外にも嵐山には見るべきものは、無数に存在する。そのひとつが「トロッコ列車」になる。

Un…finished Kyoto

  

   

1 : トロッコ嵐山駅乗車

   

嵯峨野トロッコ列車
天龍寺→竹林の小径→トロッコ。嵐山最強のコース。

トロッコ列車 に乗るときは竹林の小径を抜けた先にある「トロッコ嵐山駅」からにしている。最初に来たのは冬だった。保津峡は葉落ちした木々で満ちている。寒空のせいか2019年の台風被害で剝げ落ちた山肌が一段と痛々しく感じる。世の中はコロナ禍の真っ最中で観光客はほとんどいない。冬枯れの木々でいっそう寂しく感じた。ただ、普段は観光客を満載している嵯峨野トロッコ列車にゆっくりと乗れたことが、ちょっと楽しかった。

2回目は夏の盛りの時期だった。山は一変していた。緑が眩しい。観光客も増えて、活気が戻りつつあった。トロッコ列車は妻が好きで、乗っていて楽しいそうだ。列車はディーゼル機関。軽油を燃料としている。私の地元の在来線も電車ではなくディーゼルだったから私にとっては懐かしいというよりも、むしろ慣れてしまった乗り物だった。

なので、もの珍しさはない。それにしても暑かった。そういう列車内に嵐峡と保津川に冷された涼しい風が入ってくる。考えてみたら普段は家のエアコンと会社にいれば建物の空調の風にしかあたっていない。自然の風はこんなにも気持ちいいものなのか。

   

嵯峨野トロッコ列車
「あ。実家の「汽車」だ」と思わず言ってしまう。

京都には奥座敷がふたつある。ひとつは東の鞍馬・貴船・大原。もうひとつはここ西の端 嵯峨野だと個人的には思っている。レールにトロッコ列車とは「京都の夏の涼」としては風情こそないが、嵯峨野の近隣住民としては応援したい。手が届きそうなくらい近くにある緑の木々と眼下の保津峡は見ごたえがある。斜面ギリギリに敷いてあるレールのおかげで渓谷はまるで車窓の真下にあるのではと思えるくらいだ。

涼風の中、列車は走る。列車は嵯峨野トロッコ駅を始発駅にして間に嵐山トロッコ駅、保津峡トロッコ駅を挟んで終着のトロッコ亀岡駅まで、わずか4駅しかない。片道7.3Km。そこをおよそ25分で走る。終点の亀岡駅では保津川下りに用がない限りは特段、何もないのでほとんどの観光客はすぐに折り返す。だから行って帰ってきてで、おおよそ1時間の旅。これがけっこういい気分転換になる。

   

2 : 悲喜こもごも

   

窓からはお手を出さないでください。

関西に旅行で来たとしても移動のほとんどは街中になる。京都観光の主役が寺社仏閣とは言え、移動はやっぱり私鉄や地下鉄になるし、大阪梅田の巨大地下空間なんぞ完全に人工のダンジョンだ。そもそも京都に住んでいても、旅行で来たとしても嵐山を含めた自然を主軸にした観光地は案外、貴重だ。

街中から距離をとるというのは少し不安だけど気持ちのいいものでトロッコ列車などは観光の箸休めとしては、なお更、気分転換になる。喧騒を忘れる。普段の生活から離れる。と言うのは旅行の醍醐味だろう。

ここは安らかに観光を。と、考えたが周りは観光に忙しい。「右に見えますのは~」「左手前方の○○は~」の車内アナウンスの度に「おぉ~!」「うわあ~!」と歓声を上げている。もはや条件反射と化している。

   

嵯峨野トロッコ列車
風がいいのよ~。緑もいいのよ~。

「それもそうやな」私だって空路、陸路で遠路遥々来ていたら必死で見たし、片っ端から写真を撮っていただろう。と思ったのも束の間、隣の席のカップルは「右手に斜面は2019年の台風による被害の爪痕です」。そのアナウンスにすら「おぉ~~!」と歓声を上げてしまっている。思わず向かいに座る妻と目を見合わせて苦笑いしてしまった。

「なんや観光麻痺やな」。そこは喜ぶところではないだろう。例のカップルの彼氏くんは車内アナウンスに負けじと必死に指差しては、しきりに彼女を案内している。その膝元に抱かれたガイドブックにはびっしりと付箋が貼られ、ページはよれよれになっていた。妻と「なるほどな」と目を見合わす。

   

3 : 嵯峨野観光鉄道

   

”撮る人”を撮る。観光写真の極意。

嵯峨野トロッコ列車の中はこんな感じで和気あいあいとしている。さて、この「嵯峨野トロッコ列車」。始まりは1990年と割りと新しい。JR山陰線の複線化(上り下りの2車線になること)によって廃線になった保津川渓谷沿いの線路を再利用、というより復旧させて事業の開始に漕ぎ着けた。

完全なる観光鉄道としての事業は最初、賛否両論だったという。だが、蓋を開けたら当初予測の25万人を大幅に超える69万人の利用があったというから、観光鉄道としては大成功したと言っていい。その後も体験型の観光を好む外国人観光客にも人気となり、年間の利用者数は100万人を超えている。

  

保津川開鑿の時、割れずに残した岩があったとか。

やはり、トロッコ列車は観光疲れに丁度いい。いい塩梅の箸休めになる。乗るときは混雑していてひと苦労だが乗ってしまったら、あとは列車に身を任せたらいい。何なら写真なんて撮らなくていいと思う。車窓からの写真は難しいし、過ぎ行く渓谷の写真はスピード感溢れるよく分からない仕上がりになる事が多い。極端な話だけど、いっそ乗車に徹してしまった方がいいかもしれない。

普段このサイトでは京都の歴史やなんやと騒いでいる。本来ならこの記事もJR山陰線の歴史に踏み込み、さらの江戸時代初期まで遡って角倉了以が保津川を開削した頃を書き、その息子の素庵の美学に触れたかも知れない。あるいはトロッコ列車も通過する司馬遼太郎も訪れた水尾みずおの地についても語ったかも知れない。

   

深く急な渓谷。眼前の岩の間をすり抜ける。

   

4 : 小さな旅

   

旅も観光も箸休めが大事。この記事もあっさり終わって物足りない。それでもいい。嵯峨野トロッコ列車は乗って帰ってくるだけ。それでいい。帰着の嵐山の風景はまた違った見え方になるだろう。

今日は記事を締めてしまおう。だからこれでお終いだ。そうそう、妻に「トロッコ列車また乗りたい?」と聞いたら「乗りたい!」と元気な返事が返ってきた。「なんで好きなん?」とも聞いた。そしたら「え?なんか景色とか雰囲気ええやん!」だそうだ。旅は景色を見て、雰囲気を楽しむ。小難しい理屈は必要ないのだ。

   

100万人の座席。

  


  

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